昨日は最後のパフォーマンスの日だった。オレは晴れ男だが、いつも雨ばかり降ってるアイルランドだし、今回は嵐の中のパフォーマンスでも良いかなと半分思っていた。朝起きてみると、超快晴。こんな事はここコークに来てからほとんどなかった。ついている。今日は、アイルランド以降の自分の人生に勢いをつける為に、曲は北島三朗「北の漁場」に決めた。
パフォーマンス準備の為に早めに現場に行き、ボルトの弛みを締めなおす最終確認をした。振動でボルトは緩んでくるから、この確認を怠ると思わぬ事故につながってしまう。だんだん人が集まり始めた。結構前回のパフォーマンスが口コミで広がっているんだろう。ミックの親戚のジョニーがやってきたが、誰からの御土産か知らんが、頭に日の丸と「日本」と書かれた鉢巻きをしている。彼は前回のパフォーマンスにも来てくれていて、その後「カミカゼ」を連発していたので、何か影響を受けてしまったのかもしれない。とにかく頼もしいサポーターだ。
彼が港の方を見ながら「日本の船が来ているぜ」というので見てみると、なんと第十ナントカ丸という漁船が二隻も停泊しているではないか!日本人がぜんぜんいないし日本の船など見た事も無かったこのコークに、そんなのが偶然来ているのが驚きだ。船の周りをねじり鉢巻きをした本物の漁師さんが歩いている。オレは彼らに自分のパフォーマンスを見てもらいたかったので、柵越しに声を懸けてみた。「こんにちわ」「コンニチワ」とジョニーと叫んだが、多分彼らとしても、こんなところに日本人がいるとは思っていないのか、反応してくれない。彼らは多分シャイなんだろうということになり、柵を越えて船に近づいてみる事にした。
鉢巻きのオジさんは、佐藤さんという宮城の人で、マグロ漁に来ていると話していた。他に土佐の人もいた。こんな地球の裏側まで、彼らマグロ漁師はやってきている。まさにオイラの船は三百トンだ(マグロ漁の歌)。すげー。オレのフォードと北島三郎が彼らを呼び寄せたとしか考えられない程のジャストタイミング。こんな事があっていいのか。彼らにオレのパフォーマンスを簡単に説明し、見に来てもらった。と言っても船から作品まではほんの数十メートルだが。
今日の最終日は、さすがに沢山人が来ている。特別にフォードにビール掛け、久保田による「港の神様お願いだ」という特別木遣り歌を披露した。盛り上がっている。日本人漁師さん達もウケている。車が回り始めたが、今までの無理がたたって来たのか、クラッチ板から煙がメチャメチャ出て来て、演出効果抜群になっている。どうかエンジンよ止まらないでくれと祈りながら、二曲が終わった。「北の漁場」は、彼らマグロ漁師に捧げたつもりだ。観衆も満足げだ。とにかく神懸った日だった。忘れられない日だ。涙が止まらなかった。
|